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参議院議員 | 梅村みずほ
2021.08.02
児童虐待やいじめ、育児にまつわる社会問題に取り組んでいる参議院議員の梅村みずほさん。フリーアナウンサーから政治家という大胆な転身の背景には、梅村さんが自身の人生を通して感じた課題や希望がありました。
参議院議員 | 梅村みずほ
うめむらみずほ/1978年生まれ。大学在学中からイベントMCとして活動を開始。旅行代理店での勤務を経て、2003年から本格的にフリーアナウンサーに転身する。関西を中心にリポーター、キャスターとして各種メディアで活躍し、2017年からは話し方教室を運営。2019年、第25回通常選挙において大阪府選挙区より出馬し、初当選を果たす。日本維新の会所属。
現在、日本の国会では衆議院と参議院で合わせて約100人の女性議員が活躍していますが、その割合は全体の約10%で全世界中163位。諸外国と比べても、まだまだ遅れを取っているのが現状です。女性の参政権も太平洋戦争終結後、民主主義国家となったことで、ようやく獲得したこの国では、現在、男性目線だけでは解決できない社会問題も山積みであり、その内容は時代とともに複雑化を辿っています。一般人、そして子育てをする母親の目線で国会に立つ梅村みずほさんは、かけがえのない親子の日常を守るため、日々、状況の改善に取り組んでいます。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
フリーアナウンサーとして活躍していた梅村さんでしたが、キャリアを積み重ねていく中で「子どもたちの未来」と「仕事や子育てに揺れ動く女性の生き方」への疑問を感じ、政 治の道に足を踏み入れることに。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「20代の頃からマイクを手に仕事をしてきましたが、次第に高校生へのアナウンス指導など、教える側に立つお仕事が増えていったんですね。先生と呼ばれるような仕事には無縁だと思っていたのですが、めきめきと成果を発揮する生徒さんを見ていると私も嬉しくて。そんな折、子どもを授かって、それまでのお仕事をいったんリセットすることに。しばらくして現場復帰しようと思ったものの、子どもが小さいうちは時間的な制約も多くてなかなか以前のようにはいきませんでした。それなら、いっそ自分の生活時間に合わせて仕事を作ろうということでトークスクールを設立。幸運にも事業は順調だったのですが、受講生と向き合ううちにコミュニケーション面でのコンプレックスを青少年期から抱えていらっしゃる方が多いことに気づき、法人化して子どもたちに言語コミュニケーションを伝えていこうとしていました。その時、大学時代の先輩に事業の構想を話してみたところ『それを政治でやってみたら』と助言されて衝撃を受けたんです。政治!その手があったか!と。そして、なるほど子どもたちの明るい未来を作るためには政治こそが重要であると気づいたのです」
もともとは政治に対してはあまり関心のないいわゆる”無党派層”の一人だった梅村さんですが、政治が問題解決の糸口であると気づいてからは猪突猛進。2019 年には、みごと参議院議員選挙に当選。母親目線の政治家として国会に立つ梅村さんは現在、凄惨な状況が続く児童虐待やいじめ問題の解決に全力で取り組んでいます。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「アナウンサーとしてニュースを読んでいるときから児童虐待の報道に触れるたび、『どうして、こんなにひどいことが何度も起きるんだ』と理解できずにいました。ただ、 自分自身が出産して育児の過酷な現実を知り、“うつ”のような状態を経験して初めて、虐待は遠い世界の話ではなく一歩間違えば自分もすぐに加害者になってしまうのだと感じました。子どもというのは生まれてきてくれただけでも感謝すべきなのに、愛されるべき親によって命を落とす。これは、もう悲劇でしかありません。この状況を変える鍵は育児サポートと教育にあると考えており、それはまさに政治の仕事。 2019年6月に虐待防止対策の強化を図って児童福祉法が一部改正されたのですが、まだまだ道半ばですね」
父親の仕事で転勤が多く、子どもの頃から日本各地を転々としていた梅村さんですが、京都の大学に進学したことを機に関西に定住。在学中からリポーターやMCの仕事を開始します。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「大学で放送サークルに入っていたのですが、ひょんなことからある事務所にスカウトしていただいて。学業の合間にお仕事しながら、将来のことを考えてテレビ局のアナウンサー試験も受けたけど全部落ちました(笑)。2001年、就職氷河期のまっただ中でアナウンサーの採用自体少なかったことから、幅広い業界を視野に入れて就職活動をし、ご縁のあった旅行代理店に総合職で入社しました。ただ、仕事は楽しかったものの当時は多くの企業がそうであったように、総合職と一般職、男性と女性、正社員と契約社員という線引きに疑問を感じつつ、やがて”本当に自分が求めている仕事は何だろう”と考えはじめました。葛藤しているうちに、学生時代に所属していた事務所から、 FM アナウンサーのオーディションを受けないかとお話をいただき、一度きりの人生だ!と安定を捨て転身を決意しました」
紆余曲折を経て話す仕事に戻ってきた梅村さんですが、競争の激しい業界の中で、駆け出しのフリーアナウンサーが仕事を続けていくには、大変な苦労がありました。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「旅行代理店をやめて収入や生活環境も一気に変わるので、まず不動産屋に行って『とにかくいちばん安い部屋を!』とお願いしました。紹介してもらったのがビジネスホ テルを無理やり改装した 3万円のワンルーム。ベッドも置けないほど狭い空間にマットレ スを敷いて、猫と一緒に暮らしていました。私はその部屋をマッチ箱と呼んでいたんですけど、2年以内に絶対家賃6万円の部屋に住むぞ!という目標もモチベーションになりました。目標ですか?無事達成できましたよ!」
会社員時代とは収入が激変し、再出発直後は爪に火をともすような生活でしたが、自らの手で仕事を切り開く経験は、何ものにも代えがたい喜びに満ちていました。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「会社に務めていれば定期的にボーナスが振り込まれるけど、フリーランスにはそんなものはありませんから、お仕事一本いただけるだけでも本当にありがたくて。当たり前の話ですが長年活躍されているスタープレーヤーの先輩方とはギャランティも雲泥の差なので、最初の頃は交通費を引いたら赤字なんて現場もよくありましたね。それでも毎日楽しかったし、明日も仕事があるということに感謝する日々。経験を積み重ね少しずつ収入が上がっていく達成感は自己肯定感にも繋がっていきました。 そうこうしているうちに 人気番組の長期レギュラーの仕事もいただけるようになって軌道に乗りだし、最初にお話したアナウンス指導やトークスクール、政治家への道に繋がっていきます」
梅村さんが長年、活躍してきたMCの現場は急な内容の変更や、ぶっつけ本番が頻繁に起こる世界。厳しい環境の中だからこそ鍛えられてきたその経験は、現在、働き方改革でフリーランスへと転身する人々も大いに参考にしたいところです。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「炎天下の現場で朝から晩までしゃべりっぱなしとか、『仕事内容わからないから現場で聞いて』と言われて向かったら中学生の柔道の実況中継で、解説をされていた顧問の先生に助けられて乗り切ったりとか(笑)、常に何があってもおかしくない状況でお仕事をしていま した。子ども向けイベントにドレスではだめだし、ハイブランドのレセプションにアニメ キャラの Tシャツでは行けません。衣装やヘアメイクもTPOに合わせます。 現場に何を求められているのかというニーズは依頼を受けたときから把握しておかなければなりませんし、たとえ台本がなく直前まで内容が不明でも、マイクを持って舞台に出た以上、格好をつけるのは絶対。そういった現場での経験が自分の成長につながったし、今の仕事にも生かされています」
ハードな労働環境ですが、観客や視聴者と直面しているだけに、良い反応があったときは喜びもひとしお。そこには真摯に仕事に向き合う梅村さんのポリシーが見受けられます。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「例えばラジオ局では、カニやふぐのシーズンにショッピングコーナーが設けられるんですけど、 各局、担当するリポーターによって売上が大幅に変わってきます。扱う商品の魅力はなにか、その魅力をどう伝えるのがベストかを考えれば結果はついてくる。『みずほちゃんがリポーターやってくれるとめちゃくちゃ売れるんだよ!』とクライアントに喜んでいただけたらやっぱり喋り手冥利に尽きるというもの。また、ある著名人の方から『講演会でジョークを 言ったらものすごく滑ってしまったんだけど、どうすればよかったのかな?』とアドバイ スを求められたので、現場で見て感じたことを率直に伝えたら、『君に相談してよかった!』と言っていただけて。私は商品のレポートでも人と話す時でも嘘偽りなく伝えることにしているのですが、そういうポリシーを評価していただけたのも嬉しかったです」
トークスクールで、数多くの現場から得た経験を教えていた梅村さん。最も大事なことは、上手に話そうとするのではなく相手を思いやりながら本心を伝えることにあると語ります。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「私が生徒さんにまずお伝えしていたのは、万人に好かれようとしてはいけませんということ。食べ物でも、お米やお肉ですら嫌いだという人がいます。人間である以上、私たちは何かしら光る個性を持っているので、万人に好かれようというのは無理があるんです。受講生の中には、会社の経営者で『株主の前はおろか、従業員の前でさえ緊張するほど口下手で…』という人もいましたが、緊張するのは”失敗したらどうしよう””未熟さを露呈したくない””話が上手いと思われたい”などベクトルが自分に向いているから。”たとえ失敗したとしても、この方のために私ができる精一杯をお伝えしよう”とベクトルを相手にシフトすることができれば緊張は和らいでいきます」
異色の経歴で政界に新たな風を吹かせている梅村さん。無関心だったという政治の世界に入って得た気づきにより、それまでの価値観が一変しました。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「私はもともと親の影響で、政治の世界はダーティーなものだと長いこと思い込んで近づ かないようにしていたんです。ところが無党派層を卒業して、実際に自分がこの世界に入ってみると、意外にも多くの議員はさまざまな問題解決のために思った以上の奮闘をされていて、日本はまだ捨てたものではないと希望を持つことができました。一方で、私も取り組んでいる虐待やいじめなどの問題に正面から向き合ってくださる方はまだ まだ少ないので、そこは増やしていきたいところですね」
今後の活躍が期待される梅村さん。政治に関心を持つことで世の中が変わることを、若い世代を中心に幅広く知ってもらいたいと願っています。
梅村みずほさん(以下:梅村さん)
「時代が進むにつれて価値観や考え方は変化していきます。だれもが何かしらの組織や団体に属していた一昔前に比べ、今は働き方もライフスタイルも多様化しているし、政治がキャッチアップできないほどにAIやIOTなどデジタル技術が進歩しています。政治も新しい時代を迎えるでしょう。特定の組織や団体と繋がらない政治家が聖域なき改革を実行できるのだと思うし、世間からも求められるのではないかと思います。かつての私は”日本の未来より今日の子どもの晩ごはんと明日の仕事のことで頭がいっぱいだ”と思ってせわしく生きていましたが、そんな一日一日が忙しいママやパパこそ、小さなわが子の手を引いて投票所に行っていただきたいとお願いしています。その行動はお子さんの未来に責任をもつことにもつながっているから。絵本を読むこと、お風呂に入れてあげること、宿題を気にしてあげること、そして政治に向き合うことも親としてお子さんのためにしてあげられる大切な役目なのではないでしょうか」