町家を活用した新たなプラットフォームで京都から世界へ情報発信

株式会社レンジ 代表取締役 | 中本幸一

2001年のオープン以来、独自のスタンスで店舗運営を展開し、関西を代表するナイトクラブとして成長した『WORLD KYOTO』。そのオーガナイザーである中本幸一さんが、新たに手掛ける店舗は、真逆の時間帯となる昼間営業のカフェ。2022年2月に京都・河原町でオープンした『世界倉庫』のコンセプトとは。

中本幸一

株式会社レンジ 代表取締役 | 中本幸一

なかもとこういち/1976年生まれ。1999年、大阪のCLUB JOULEにオープニングスタッフとして入店し、ナイトマーケット業界に携わる。2000年に飲食店経営企業に転職し、翌年に社内独立の形で『WORLD KYOTO』をオープン。国内外のトップDJやアーティストを招聘し、関西を代表するナイトクラブへ成長させた。同店のほかにも、さまざまな店舗の企画・運営などを手掛けている。

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アートやイベントを満喫する、新たな交流スペース

情緒たっぷりの京町家をリノベーションした世界倉庫。オープンのきっかけには、2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響していました。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「当初はすぐ収まるだろうと思っていたコロナ禍が思った以上に長引いて、その影響でWORLD KYOTOも休業し、仕事をできない状況が続きました。そんな時に、昼の営業形態で、もともと興味があったカフェをやってみたいという思いが湧いてきて物件探しに着手。散歩中に気になる京町家を見つけて、2ヶ月後に見たら貸しに出されていたので、すぐに不動産会社に連絡して契約しました。それが2020年秋のこと。ただ、その時は、まだ店舗のビジョンも決まっていなかったので、1年半ほどの紆余曲折を経て、ようやく開店にこぎつけました」

世界倉庫のギャラリースペースからオンラインで取材が行われました

現在の営業は、平日にコーヒーとスイーツ、日曜日は中本さんと交流のある飲食店のシェフたちがイベント出店を行うスタイルで展開されています。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「旧知であった樟葉のスイーツ店『ゴリール』が、台風による水没で閉業されたことを知り、『それなら僕たちもまだ店舗の方向性が明確になっていないから一緒にやりましょうか』ということになって。もともとはフルーツをメインにパフェなどを提供するような形態を考えていたのですが、せっかくのご縁なので、しばらくはこの業態を続けて、もう少しメニューを増やせたら。日曜日の企画で参加してくれているシェフたちにも監修で入ってもらって、この店ならではのデザートなどを提供できればと思っています」

開業前のカフェスペースの様子。ゆとりのある空間で、週末には有名飲食店のイベントが開催されます

開店にあたって中本さんが意識したのはWORLD KYOTOとの差別化でした。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「WORLD KYOTOのメイン層である20代の方はそんなに来ていなくて、どちらかといえば、もともとそこで遊んでいたOB世代や昔から馴染みの方々が家族連れで来てくださることが多いですね。日曜日はお子さんが多くて楽しいですよ。今、近いところの予定で進めているのは、ゴールデンウィークのガレージセールとファーマーズマーケット。こういったイベントで情報発信を行い、この店が新たなプラットフォーム、交流の場になればいいなと思っています。WORLD KYOTOだけでは知り合えなかった層にもっとアピールしていきたいですね」

前のオーナーが日本舞踊の演習場として使っていたスペースは、現在、アパレルの展示販売会など、レンタルスペースとして活用

店舗内のスペースは、ギャラリーやコワーキングスペースなど、さまざまな活用法を検討中。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「前のオーナーが外国人旅行者向けに日本舞踊を上演していたスペースがあって、今、アーティストの方々に、こういう場所があるので個展をしませんかと声掛けしているところです。その他の展開については、このスペースを活かした観葉植物のショップなどはどうだろうか、もしくはWORLD KYOTOのノウハウを活かして、1年のうち300日ぐらい飲食関連のイベントをブッキングしてみようかなど、いろいろアイデアはあるのですが、まだ様子見ですね。この辺は今後の出会いや人との繋がりでどんどん変わっていくかと思います」

2階スペースの壁に展示されているオブジェは、ビートルズのメンバーを模したもので、京都造形芸術大学の卒業制作展で購入したもの

関西クラブカルチャーにもたらした変革

香川県出身の中本さんは、大学進学を機に大阪に移住。学生時代は意外にもクラブカルチャーには、まったく興味がなかったとのこと。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「ブリティッシュロックが大好きで、ファッションもモッズ。ライブによく行っていたけど、ナイトクラブには足を踏み入れたこともなく、『DJって人のレコードかけて何をするの?』と思っていたぐらい。それが、たまたまのご縁で大阪のCLUB JOULEにスタッフで関わることになり、オープニングイベントでのDJ EMMAさんのプレイにカルチャーショックを受けました。ターンテーブルとミキサーを駆使して3枚のレコードを1つの曲に昇華させる。独自のミックスで一晩中お客さんを高揚させ続けるということがすごいと思って、クラブの奥深さにハマっていきました」

CLUB JOULEで1年勤務した後、京都で飲食店を経営する企業に転職。その会社で現在のホームであるWORLD KYOTO開店のきっかけを掴みます。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「会長がエンタメ好きな人で、昔は、一棟まるごとディスコやライブハウスが入ったニューヨークスタイルのビルを経営されていたんです。波に乗らず数年で撤退されたのですが、ナイトクラブをまたやりたいと相談され、まずは会長直結の部署で1年間、事業の展開や飲食店のプランニングを勉強させてもらいました。それから、『1千万円でクラブを作れるか?』と聞かれたので、二つ返事ではいと応えて2001年にWORLD KYOTOを開業。最初は壁も自分たちでペンキを塗って、最低限のPAを設置しただけのこじんまりした箱だったんです」

2001年にオープンしたWORLD KYOTOは自主企画を立て続けに行うことで知名度が上昇。今や関西を代表するナイトクラブに

開業から数年は経営的に厳しかったというWORLD KYOTOですが、それまで関西の他店舗にはなかった独自性を打ち出して大きな転機を迎えます。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「関西のクラブに大物ゲストを招いてイベントを打つときって、基本的にプロモーターが大きな店舗をレンタルして企画・運営を行っていたんです。でも、東京だと名のあるDJが小さなお店にふらっと遊びに来てプレイするなんてこともよくある。その雰囲気を僕らも作りたい、もっと関西の夜を盛り上げたいと思って、MONDO GROSSOの大沢伸一さん、Fantastic Plastic Machineの田中知之さん、KYOTO JAZZ MASSIVEやEMMAさん、石野卓球さんなど、東京のDJをたくさん入れて、お店の自主企画を開催することに注力しました。金銭面で大変でしたが、結果的に人が人を呼ぶというルーティーンに乗って、4年目からはぐっと客足が増えました」

WORLD KYOTOで国内外から大物DJやアーティストを招聘。アメリカのエレクトロハウスを代表するスクリレックス(右)と

自分たちの企画を発信するスタンスを確立したことで、関西では以後、この流れに追従する店舗も増加。関西のクラブシーンは、WORLD KYOTOの登場により新たなステージへと駆け上りました。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「僕らはプロモーターを介さず、自分たちで直接DJに交渉し、送迎や食事もずっとご一緒するので、いろいろお話しているうちに関係が深まるんです。関西では僕と同世代の人たちがクラブの運営をするようになってきたので、たとえば、ある大物DJをWORLD KYOTOで呼んだら、次の日に大阪の予定も組んで経費を折半するといった流れが出来てきました。今後は、2025年の大阪万博やIRで関西の経済が大きく動くと思うので、行政や民間とも連携しながら、今よりも、もっと非現実を体感できるような、規模の大きいクラブを作れたらと思います」

クラブからサウナまで、夜も昼も楽しみたい!

WORLD KYOTOに世界倉庫。幅広い業態を手掛ける中本さんが今後、計画しているアイデアは?

中本幸一さん(以下:中本さん)

「世界倉庫の入っている町家の通り沿いの物件が空いたら、サウナを追加したいなと思っています。サウナや銭湯巡りは昔からの趣味なので、世界倉庫に限らず、廃業された銭湯を引き継いで再開させるといったこともやりたいです。昔は中年男性の嗜みだったサウナが完全に健康志向のカルチャーとして定着したので、今風の銭湯を作って、若い人たちにくつろいでもらいたいですね」

空き時間ができたらスーパー銭湯やサウナに足を運ぶという中本さん。銭湯経営も夢の一つです

プライベートでは、コロナ禍により制限されている海外渡航への思いも。

中本幸一さん(以下:中本さん)

「旅行が大好きなので、一週間ぐらい休みを取って、ゆっくり海外を見て回りたいですね。完全な趣味でいうと子どもの頃からの憧れであるエジプトで遺跡などを見たいし、カルチャー的なところでは、ニューヨークは、やはり刺激にあふれているので、現在の街並みも含めて見ておきたいです。海外に行くとさすがに仕事のことを忘れられるので、頭の中をリセットして、いろいろなものを吸収する。好きなことを仕事にしているので趣味との境目が曖昧ですが(笑)、これが今の自分の趣味かもしれません」

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世界倉庫

世界倉庫

平日はコーヒーや焼き菓子などを提供するカフェとして営業。毎週日曜日は、関西の飲食店とコラボレーションし、出展イベントを行っている。2階の多目的スペースでは今後、アーティストの個展や各種イベントの開催も予定している。

世界倉庫

住所/京都市下京区富小路高辻上ル筋屋町144

電話/075-754-8289

営業時間/11:00〜20:00

定休日/月・火曜