急成長を遂げるインフルエンサー・マーケティング。その舞台裏と勢いを当事者が語る

株式会社BitStar 執行役員 | 宮本晋一郎

インターネットを使用していると、よく目にするインフルエンサーマーケティングという言葉。どんなものかよくわらないという人も、実は、YouTubeやTwitter、InstagramといったSNSを通じて日々触れているほど身近なものとなっているこのマーケティング手法。エンタメ性あふれる動画でおすすめ商品の魅力を伝えるインフルエンサーは、今や日本経済の活性化において、必要不可欠な存在となっています。

宮本晋一郎

株式会社BitStar 執行役員 | 宮本晋一郎

みやもとしんいちろう/1985年生まれ。大学卒業後、大手証券会社でコンサルティングに従事。2012年より株式会社マイクロアドで執行役員としてインターネット広告部門を管掌。2020年2月、株式会社BitStarに入社し、執行役員に就任。インフルエンサーマーケティング事業「BitStar Agent」の責任者として業務を統括している。早稲田大学大学院経営管理研究科(MBA)在籍。

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驚異的な伸びを見せるインフルエンサー・マーケティングとは?

SNSメディアなどで商品の魅力を発信し、視聴者に購買などのアクションを促すインフルエンサー・マーケティング。YouTubeを主戦場に個性的なインフルエンサーたちが消費者視点で制作する動画は、多くの視聴者から支持を集め、ヒット商品の誕生に貢献しています。現在、BtoB、BtoCにおける広告戦略の中でも右肩上がりの急成長を遂げ、多くの企業が導入しているこのマーケティング手法。増えつつある事業者の中でも、国内4ヶ所に事業所を持つ株式会社BitStarは、革新的な戦略で異彩を放つ台風の目のような存在。同社で執行役員を務める宮本晋一郎さんにインフルエンサー・マーケティングの現状、そして導入にあたっての心構えなどを伺いました。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

東京・渋谷にあるBitStarオフィスからリモートで取材を行いました

ここ数年で発展してきたこともあり、「言葉は聞いたことがあるけど、馴染みがない」という人もまだまだ多いインフルエンサー・マーケティング。まずは、なぜ、今の時代にこれだけ広く受け入れられているのかを教えていただきました。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「SNSが普及する前の時代、映像メディアでの広告は、芸能人やスポーツ選手などの有名人が出演するテレビCMが主流でした。しかし、現在のように情報が広く世の中にあふれていると選択する幅も広くなり調べたり検討する時間も長くなっていきます。そうなると効率良くものを知りたい、調べる手間をエンターテインメントに楽しむ時間に当てたいという欲求が若年層を中心に広が、自分で時間をかけて調べるのが面倒くさくなってくるんですね。そこで手短にストレス無く情報を得るためにインフルエンサーの立ち位置が重要になってきます。インフルエンサーには、自分の知っている人、安心できる人が勧めるものは間違いがないという信頼感があります。日本の市場は少し遅れていましたが、ようやく世界的な流れに追いつき始めている状況です」

海外では例えば中国のECサイト・ライブコマースなど、2017年頃からすでに盛り上がりを見せていましたが、日本での定着に時間がかかった理由には、それぞれの国の人々が企業に対して持つイメージが大きく影響しています。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

芸能人や大手広告代理店の参入で、インフルエンサー・マーケティングのターゲット層は今後、幅広い年代にまで拡大されることが予想されています

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「日本企業のサービスレベルが高く、海外と比べて国民から商品やサービスに対する信頼感を得られている側面があります。そのため、これまではCMなどでの広告に一定の効果が見込めました。しかし、昨今は日本でも10代、20代の半数がもうテレビを見ていないという調査結果、消費者が企業の大々的な宣伝に対して違和感を覚えている現状もあるので、それを解消するため、間にインフルエンサーに入ってもらうという動きが今後も活発になってくると思います」

後発と言われていた日本のインフルエンサー・マーケティングですが、YouTubeの発展とともにインフルエンサーも急速に増加し、市場の加熱ぶりも驚異的な数字となって現れています。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「外部の調査レポートでは、インフルエンサーマーケティングは業界全体で年に20%ほど成長していると言われています。当社の月の業績だけを見ても前年比でそれを遥かに上回る成長率があるので、世の中で思われている以上に市場は成長していますし、まだまだ伸びると思っています。最近は芸能人の方もYouTubeに参入してきたり、テレビなどを主戦場にしていた大手の広告代理店もインフルエンサーマーケティングに取り組み始めているので、今後はさらに盛り上がってくると考えています」

 


                

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

右肩上がりの成長を続けるインフルエンサーマーケティング。2025年には700億円を超える市場規模になることが予測されています

大手証券会社で神戸に配属。急成長するWEB業界への転身

業界の最先端であるBitStarで活躍している宮本さんですが、大学卒業後に初めて就職したのは、現在とは真逆とも言える証券会社でした。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「私の親族に経営者が多く、自分もいつか経営がしたいと思っていたので、大学では経済学部で経営の勉強をしていました。卒業後、証券会社のコンサルティング職に就き、神戸の支店に配属。そこで上場会社の社長さんや弁護士の先生、お医者さんなど、さまざまな方に対して営業活動を行っていた中、財務レポートなどを見ていると、WEBのメディアやマーケティングがこれから伸びていきそうだということで、徐々に転身を考えるようになっていったんです」

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

学生時代は経営学を学ぶ一方、趣味であるサーフィンにも打ち込んでいました

東京への転勤の後、証券会社から転職した宮本さんは、当時、WEB業界の中で急先鋒として注目を集めていた株式会社マイクロアドへと転職します。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「実はマイクロアドに行く前、証券会社を退職した直後に3ヶ月間、ノープランで海外を放浪していたんです(笑)。海外旅行が好きなんです、在職中は休みが全くなかったので、行くなら今しかない!と思いました。ドバイやシンガポール、フィリピンなどを巡って、リフレッシュすることができました。マイクロアドは、インターネット上にある膨大なデータを集めている会社で、それを元に最適な人に向けてピンポイントで広告を当てるためのツールを作っているメーカー。いつか経営がしたいと思っていたのと、最初に就職したのが大手企業だったこともあり、自分に振り幅を持たせるために次はベンチャー企業に行こうと決めていたんです」

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

証券会社を退職後、3ヶ月に渡り海外を巡る旅へ。写真はシンガポール・Marina Bay Sandsのインフィニティプールでの1枚

新天地・マイクロアドでの仕事も順調だった宮本さんですが、新たなビジネスとして注目されていたインフルエンサーマーケティングを追求するため、2020年、BitStarへと籍を移します。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「ちょうどHIKAKINさんのいるUUUMやTwitter、Instagramなどで活躍するサイバー・バズが注目されている時期だったので、マイクロアドの中でもインフルエンサーマーケティングがこれから伸びるぞという話題もあったんです。実際に新規事業の提案もしましたが、その時は実現に至らず、かなり時間は経ちましたが結果的にBitStarへ転職しました。BitStarはスタッフの平均年齢がちょうど30歳とたいへん若い会社です。僕、今35歳です社長が同い年、現場のメンバーはほとんど20代ということで、本当に活気がありますね」

2020年2月より入社したBitStarでは、マイクロアド時代の手腕を活かし、執行役員として活躍中

個性的なインフルエンサーが勢揃い! BitStarの広告戦略

200組を越えるインフルエンサーが所属しているBitStarは、数ある事業者の中でもトップクラスの規模を誇るインフルエンサーマーケティングの大看板。同社の戦略を通して、これから導入を考えている企業・商店に向けた、とっておきのお話も伺いました。まずは、多くの人が気になっているであろう予算、費用対効果について。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

BitStar制作のチャンネルで業界No.1を誇る「スターテニスアカデミー」。世界的に有名なプロ選手も視聴しているとのこと

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「都市部でテレビの広告枠を購入してCMを制作するとなると、一般的には数千万円〜数億円はかかるのですが、当社の場合、設備費が大きいゲーム系のライブ配信などごく一部を除き、その規模の予算になる案件はほぼありません。20〜30万円からというお手頃プランもありますし、インフルエンサーが動画も作るので制作費用も組み込まれています。ある企業が、当社のインフルエンサーが企画した動画を公開したところ、売上が4倍になったという例もあるので、費用対効果は極めて高いと言えます」

インフルエンサーの動画を撮影しているスタッフ。現場では20代の精鋭が活躍しています

少ない予算とは裏腹に、大きく拡散する可能性も秘めたインフルエンサーマーケティングでの情報発信は、大企業のみならず小規模な企業や個人商店などにも強い味方。そして、宮本さんは、BitStarのサービスを地方の人々にこそ活用してほしいと願っています。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「以前地方からの情報発信には時間もお金もかかっていたのですが、当社をはじめとしたインフルエンサーマーケティングを活用すれば低コストで動画がバズる(広く拡散する)可能性もありますので、おすすめしたいです。地方のお客様の場合、自社の社員をインフルエンサー化したいというニーズも多、当社でもサポートさせていただきたいと思っています。また、最近、新潟県にも当社のサテライトオフィスを開業し、自治体や事業会社とのお取り組みをスタートしました。高度な技術で最先端な領域に積極的に取り組んでいる新潟のものづくりを、もっと世界に広めたいですね。他にも福岡にもオフィスを出し、当社の海外進出に向けた重要拠点としているのですが、インバウンド、アウトバウンドの環境が非常に充実しているので、今後ますます注目が高まると思います」

新潟、福岡の今後の発展に期待を寄せる宮本さん。特に福岡は「支社長として行きたかった!」というほど魅力を感じているのだとか

導入する側ではなく、される側(インフルエンサー側)の事情はどうなのでしょうか。今や小学生の憧れの職業にユーチューバーが挙がり、多くの若者が動画制作などでインフルエンサーとして花開くことを夢見ている中、現場を知る宮本さんが彼らに求めるものとは?

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「最近は芸能人の方もインフルエンサーとして活動されていますが、彼らは企画や制作チームを引き連れていることが多いので、コンテンツの充実度は抜群。これまで活躍しているインフルエンサーも、今後はより充実したアイデアが求められるでしょうね。これから始めるは、一般的なチャンネルだとまず成功しません。お金をかければよいわけでもないので、まずはニッチな分野に着目してジャンルを広げるのが戦略かと思います。ただ、それ以上に大事なのは、熱量を持って継続的にやること。コンスタントに動画を投稿しないと再生回数も伸びないし、チャンネル登録者数も増えない。粘り強さ、継続力は大事です…根性論みたいなのはちょっと嫌なんですけど(笑)」

BitStar所属の中で、社員が一推しする現役大学生のインフルエンサー「かすこんねぅ」さん。独特の世界観が若者を魅了し、チャンネル登録者数は開始3日で数十万人を突破

インフルエンサーマーケティングのこれから、そして、あくなき学びへの欲求

入社1年ですでに多くの実績を築いている宮本さんですが、これまで携わってきた案件の中で印象的だったものについて訪ねると、非常に興味深いエピソードが。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「これは当社がソリューション提供型の組織になろうということで、某外資系メーカー様に提案させてもらった事例です。販売されている商品を元にしたダンスや音楽を制作し、YouTubeだけでなくInstagramやTwitterなどの専用アカウントを作って全般的に運用したのですが、視聴者がそのダンスを踊って投稿すると、1回につき決まった金額が特定の団体に寄付されるというシステム構築しました。社会的にも意義のある取り組みができ、インフルエンサーマーケティングやWEBマーケティングを多面的に、複合的に提案するという成功例として感慨深かったです」

まだまだ伸びを見せることが予想されているインフルエンサーマーケティングですが、今後の傾向については、どのような変化が考えられているのでしょうか。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「インフルエンサーとして一発当てたいという人もいる反面、最近では、目的や優先順位がお金でなく、社会的に意義があることをやりたいという人も増えてきています。当社ではインフルエンサーのやりたいことを大事にするというモットーがありますが、今後は、よりそのための環境作りを強化していきたいと思っています。SDGsなどにもインフルエンサーが入って世の中に貢献できればと思っており、その傾向は業界全体に広がっていくかと思います。また、ファッションの分野でもD2Cブランドを展開し、ヒト起点、モノ起点のものづくりを活発化させていきたいと思っています」

BitStarでは、Instagram発のセレクト型レディースブランド「FASHIRU」など、ファッションD2Cブランドの事業も展開。従来のアパレル産業とは異なるモノ起点の事業展開が注目を集めています

多忙を極める宮本さんですが、わずかな時間の合間を縫って、なんとビジネススクールにも入学。より深く経営を学び、今後の業務にフィードバックすることが期待されています。

宮本晋一郎さん(以下:宮本さん)

「今、平日夜と休日を使って大学院でMBA取得に励んでいます。会社と大学院の両立で、ほとんどプライベートの時間がありません(笑)。メインは僕ぐらいの年代ですが上は50代後半ぐらいまで。優秀な異業種の方々が集まっているので、非常に刺激的ですね。自分としてもこれまで培ってきた経験をこの機会に整理し、今後、当社が海外進出したり子会社を設立したときなどに、学んだノウハウを活用できればと思っています」

早稲田大学の大学院での教室の様子

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