ママたちの就業とスキルアップを応援し、企業との架け橋に

株式会社ママントレ 代表取締役 | 須澤美佳

日本の社会において女性の社会進出は、参政権の獲得や男女雇用機会均等法の施行など、長い年月の中で段階的に取り組まれてきました。しかし、それでも待機児童問題や雇用する側の理解が時代に追いつかないなど、まだまだ課題が多いのが実情。そんな中、関西を中心に企業とのマッチングやアウトソーシングのほか、キャリア相談や勉強会など母親たちの「働きたい」という思いをサポートする活動を行っている株式会社ママントレは、女性ならではの感性が活かされる、新しい時代の働き方を展開しています。

須澤美佳

株式会社ママントレ 代表取締役 | 須澤美佳

すざわみか/1977年生まれ。大学卒業後、大手企業にシステムエンジニアとして就職。出産を機にフリーランスのWebデザイナーとして起業し、働く母親たちを支援するサイト「ママントレ」を立ち上げる。子育て期の女性が集まった制作会社のWeb部門で1年間、代表を務めた後、就業意欲の高い主婦と企業をマッチングするサービスを開始。2016年に法人化して株式会社ママントレを設立。

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さまざまな選択肢でママの働き方をプロデュース

ママントレ創業のきっかけは、Web制作の個人事業主として働いていた須澤さんが、仕事仲間をはじめ、さまざまな境遇の女性たちとの出会いを経て、思い描いた働き方の事業化を決意したことに始まります。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「2014年にママ向けのイベントがあって、その時に私、なんの実績もないのに働き方相談会っていうブースを設けたんです。みなさんの経験談などをお聞きできたらと思って気軽に座っていたら結果的に3日間で50人ぐらい来てくださって。その時に今後のキャリアに不安を持つ方が想像以上に多く、ニーズがあると分かったので、これはちゃんと事業にしようと思い、「エリアマイスター」をスタート。2年後の2016年7月に法人化しました。それまで行っていたママたちと企業のマッチングをより円滑に行うために人材紹介、有料職業紹介の免許も取得しました」

これまで、数多くの母親たちと企業を繋いできた須澤さん

ママントレの登録メンバーは現在、約600人。再就職やキャリアチェンジなど、仕事に対する新たな活路を求める女性たちが集まっており、企業側の仕事を部分的に請け負う「エリアマイスター」で人材の紹介やマッチングのほか、チームで業務に取り組んだりもしています。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「登録されている方の経歴は、業種でいうと経理や事務など、いわゆるオフィスワーカーが多いです。『それまで働いていた会社のやり方は他では通用しないのでは?』『ブランクがあると雇ってくれないのでは?』といった悩みをよく聞くのですが、実際にスキルをお伺いすると「それすごい!」ということが多いんです。ママントレでは、動画で学べるお仕事ガイダンスやスキルアップのための勉強会なども行っています。ただ、つきっきりの教育をすると画一的な人材になってしまうので、こちらとしては、教えることよりも職種やサポートなど、さまざまな選択肢を用意することの方が重要だと思っています」

キャリアの相談会やスキルアップのための勉強会を定期的に開催しています

須澤さんが個人事業主として働き始めた2011年と比較すると、現在は企業側の母親たちに対する考え方に大きな変化が見られるようになりました。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「以前は、『主婦の在宅ワーク=片手間』というイメージが強かったのか、企業からも『安くて良いんでしょう?』という言い方をよくされていました。『女性の活躍推進もしなくちゃいけないし、お仕事あげるよ』という見られ方も正直、多かったです。それが、この10年の間に本格的に育児をするパパが増えてきたことで、ママたちの隠されたキャリアが見えるようになり、逆にママを雇いたい!という声も増えてきました。『お母さんのような安心感のある人が良い』という要望もあり、ママの価値を分かってくれる人が増えてきたのは喜ばしいですね」

登録メンバーがキャリアを積み上げる中、ステップアップを目指すための取り組みも。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「マッチングで新しく仕事を始めたメンバーがいきなり企業の案件を一手に引き受けるのって、かなりプレッシャーになると思います。そこで2021年1月から開始した新サービス「Webパートナー」では、企業とメンバーの間に経験豊富なアドバイザーを置き、二人三脚でサポートにあたる体制を作りました。登録メンバーは、なにか行き詰まった時はアドバイザーに相談することで、その人の仕事の仕方を学ぶことができる。企業側にも何かあったときに気軽に相談できたりトラブルを未然に防げるということで安心していただけます。また、登録メンバーもアドバイザーから仕事を学んで自分も数年後はアドバイザーになる、というキャリアパスが描くことができます

ママントレの運営メンバーと。須澤さんと同じく子育て期の母親が集まって事業展開などを話し合っています

出産・育児を経て思い描いた、母親の働き方改革

7歳で関西から埼玉県に移り住み、大学時代は経済を学んでいた須澤さん。卒業後はシステムエンジニアとして就職し、多忙な日々を送っていました。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「結婚を機に夫の故郷である兵庫県芦屋市に移り住むことになって、会社にお願いして関西支社に転勤したんです。しかし、仕事があまりに激務で結婚生活との両立が難しくなったためフリーランスに転向したのですが、程なくして妊娠していることが分かり、一ヶ月安静の状態に。社員じゃなくなったから、もちろん産休を取れるわけもなく、必然的に仕事を辞めることになりました」

2010年当時の日本では、まだまだ母親たちの労働環境に旧態然とした大きな壁が立ちふさがっていました

出産後、再就職に向けて動き出した須澤さんでしたが、働く母親たちにとって共通の悩みともいえるもさまざまなハードルが立ちふさがります。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「フルタイムの仕事をするにあたって保育園を探したのですが、保育園は逆に仕事がある状態でないと入れない。結局どこもあてがなく、子どもは認可外の保育園に預けて地元のデザイン会社でパートとして働かせてもらうことになったんです。でも、やっぱり短時間なのでお給料は全部託児代に消えていくという状況で。ここから徐々に今に繋がる動きになってくるのですが、まず在宅でできる仕事を考えて、当時としては画期的なホームページ製作のオンラインのスクールを受講したんです。そこから練習も兼ねて夫の実家であった寿司屋や定年後にセミナー講師として活動していた父のホームページなどを作りました」

Web制作に活路を見出した須澤さんですが、仕事として続けるにあたって先行きが定まらない中、大きな転機が訪れます。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「2010年に芦屋市商工会が女性向けの起業塾を開催したんです。普通、起業塾って男性向けが多いので、珍しいし面白そうだったのと、在宅でWeb製作として起業したら私でも働けるかもしれないと思って飛び込んでみました。その起業塾が10月で、翌年1月には個人事業主として開業。ありがたいことに起業塾で知り合った方で、ITが苦手なので、ちょっと名刺を作って、Webサイトを作ってという依頼をいただくようになって、そこから仕事が広がるようになっていきました」

開業からしばらくは一人ですべての作業をこなしていましたが、やがて起業塾や友人を通じて仕事仲間が集まるように。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「私はWeb製作の作業は一通りできるけどデザインが苦手だったんです。友人は逆にコーディングが苦手でデザインが得意。それなら、お互いに仕事をシェアすればいいじゃないかとなって。そうするとデザインが良いので仕事の単価を上げることができたんですね。それで仕事が増えてくると、今度は、誰か事務作業をやってくれないかなと探したらコツコツやることが得意な人が見つかって。そうやって自分ができないことは得意な人に任せる働き方っていいんじゃないかと思いはじめて、だんだんやるべき方向性が見えていきました。これが後のママントレの原型となっていきます」

ママントレ法人設立パーティー。たくさんの仲間がお祝いに駆けつけました

母として、ミュージシャンとして

数多くの働く母親たちをサポートしてきた須澤さん。自身も仕事に邁進しながら母親として充実の日々を送っています。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「最近、中学2年生の娘と遊ぶことが増えてきて、2人で京都に行ったりしています。私はもともとおいしいものを食べ歩くことが好きなのですが、彼女の食の好みが私と似てきたので、一緒に出かける仲間と口実ができたと喜んでいます(笑)。生まれてから今日まで、『保育園に入るの大変だったな』『多感な時期もあったな』とか、ずっと成長を見てきましたが、こうやって親子であり友人のような関係が築けるようになったのは本当に嬉しいですね」

成長した娘さんと過ごす時間が何よりの楽しみと語る須澤さん

そして、ママントレの代表とは異なる意外な一面も。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「月ヶ瀬ジャズオーケストラというビッグバンドに在籍していて、私はピアノとキーボードを担当しています。夫がリーダーを務めているのですが、もともと出会ったのも学生時代に入っていた音楽サークルなんです。私たち以外は同志社大学の軽音楽部に所属していた人も多いのですが、みんな職種も年齢もバラバラで、音楽を通していろいろ楽しめる、話せるのがいいですね。もう一つ、フュージョンのバンドもやっているのですが、音楽の場は私にとって自分を開放できるサードプレイスなので、これからも大事にしていきたいと思います」

月ヶ瀬ジャズオーケストラではピアノ、キーボードを担当。名うてのプレイヤーたちとライブを繰り広げています

音楽活動を通じて思い描くようになった新たな展望を、今後のライフワークとして実現させていきたいと語ります。

須澤美佳さん(以下:須澤さん)

「今、ママントレでやっている事業をミュージシャンにあてはめられないかと考えているんです。大学や専門学校で技術を勉強しても、どの分野に自分を売り込めばやっていけるかわからないという人が多く、仕事として音楽を続けるなら、それを知っておくことは絶対に必要。今はママントレの仕事で手いっぱいですが、もうちょっと余裕ができたら具体的に考えたいですね」

ママントレで培ったノウハウで将来、ミュージシャンのサポートも展開したいと語る須澤さん

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株式会社ママントレ

株式会社ママントレ

Web制作や各種印刷物制作をはじめ、母親や働きたい女性たちの支援や企業とのマッチングやアウトソーシングなど支を展開。セミナーや個別指導も行っている。

株式会社ママントレ

住所/兵庫県芦屋市精道町2-16

電話/0797-61-4970

営業時間/10:00〜17:00