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ミュージシャン・GENIUS AT WORK代表 | 小宮山雄飛
2022.04.04
ミュージシャンであり、自身が所属する事務所「GENIUS AT WORK(ジーニアス アット ワーク)」の代表でもあるホフディランの小宮山雄飛さん。同社の変遷とともに、2つの顔を持つことで見えてきたビジネスにおける心得を伺いました。
ミュージシャン・GENIUS AT WORK代表 | 小宮山雄飛
1973年、東京都生まれ。ワタナベイビーとの2ピースPOPグループ「ホフディラン」のボーカル&キーボード。渋谷区の観光大使兼クリエイティブアンバサダーを務めるほか、グルメ通としても知られており、18年にはレモンライス専門店『Lemon Rice TOKYO』を立ち上げた。現在はECサイトに特化し、レモンライスの手作りキットなどを販売中。
小宮山さんが代表を務める「GENIUS AT WORK」は、ホフディランの所属事務所というだけではなく、クリエイター団体という側面もあります。立ち上げたのは20年ほど前。そのころはまだ、所属ミュージシャンが代表を務めるというのは珍しい時代でした。まずは同社が生まれたきっかけから伺います。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「もとは別の事務所に所属していましたが、2003年に一度、活動を休止したんですね。それをきっかけに僕だけが事務所から独立して、自分のマネージメントをしようと作った会社だったんです。なのではじめは、純粋に自分の音楽活動をするための事務所でした」
それから少し経ち、事務所のあり方に変化が訪れます。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「モノ作りが好きなのと、ブログなどWEBのツールが普及しはじめた頃というのもあって、裏方的に企業やブランドのホームページやポッドキャストなどの動画制作を手がけるようになったんです。それからミュージシャンとしての活動に対するマネージメントとモノ作りをする会社になっていきましたね。それがいまでも続いているんですよ」
「『GENIUS AT WORK』は、ミュージシャンとして表現する一面と、管理する一面との両方があるところもおもしろいと思っていて」と小宮山さんは続けます。それゆえによい相乗効果が生まれたそう。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「ミュージシャンの仕事をきっかけに別ジャンルのお仕事をいただいたり、その逆もありますね。いまはミュージシャンやタレントが自分で発信したり、飲食店などのビジネスを手がけるのも当たり前になりましたが、この会社を立ち上げたころは完全に分業制だったんですよ。ミュージシャンで言えばCDを出すレコード会社と管理する事務所との三角形が基本にあったので、僕らは楽曲作りの先にはタッチしないもの、という風潮でした」
とはいえもともと所属していた事務所は、自由度が高い会社だったとか。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「もともと僕らは音楽に限らず、自分たちでモノを作るのが好きで。例えばライブで販売しているTシャツ一つにしても、昔は管理する事務所がいて、デザインはデザイナーさんが担当するなど、役割が決まっていました。そうしたことを前の事務所は自由に作らせてくれていたので、自分でデザインして値段も決めて、こういうふうに販売しようとか、自分たちで考えていたんですよね。経営に近いことを経験させてもらっていたから、学んだことも多かったですね」
「ビジネスマンでもあるミュージシャンとして、大切にしていることは?」と問うと、独立するにあたって前所属事務所の社長にかけられた言葉が「深く心に残っている」との返事が。
「僕が独立するときに『一人勝ちしようとしちゃだめだよ』と言ってくれたんですよ。みんなで一緒に成功するために団結する。一人勝ちじゃない状況だからこそ、いろんなことがうまくいくものだという意味で。例え一人勝ちできそうなものだったとしても、そこで誰かと手を取り合えば、その人たちも一緒に頑張ってくれるじゃないですか」
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
そして「それはビジネスだけではなく、音楽に関しても言える」と小宮山さん。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「やっぱり、“一人勝ちな曲”ってあるんですよ。自分がリリースしたいかつ僕自身のことを歌っていて、すべて自分で作るような。そんな曲があったとして、もし自分がすべて演奏できたとしても、ギタリストやドラマーにお願いするのが大事。そうするとやっぱり、その人は曲に対して気持ちが入るじゃないですか。その思いがいい空気を生んで一緒に盛り上がれるんですよね。携わったそれぞれの『もっとこの曲をよくしよう』という思いが入るから、『みんな聴いて!』って広めてくれたり、結果的に僕が一人で作るよりもいきいきした楽曲になるし、より人に聴いてもらえる機会も増えるでしょ。なので何においても“一人勝ちしない”ということは念頭に置いています。難しい話ではなく、単純にみんなでやったほうが楽しいと思うし」
「何ごとにおいても、『なぜこれをするのか?』という意味も考えなければいけない」というのは、いまもなお一つの課題だといいます。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「スタッフにも常に話しているのですが、どんなに思い入れがあることでも、勢いだけではなくそれをすることの意味やタイミングを考えて実行できる人が、成功すると思うんです。Tシャツを1枚発売するにしても、自分が着たいものを作るのか、ファンのみんなが着たいものを考えるのか、お金を儲けたくて出すものなのか、話題性を狙うのか、それが『なんのためのTシャツなのか』を考えなければいけない。Tシャツといえばライブの定番グッズですが、ただ『定番だから今回も作ろう』という心持ちでは、結果的にどこにも刺さらないと思っていて」
「ライブを開催すれば人が来てくれて、いい演奏をすればみんな盛り上がってくれて、Tシャツも着てくれるというのは当たり前ではないんです。そう考えがちなんですが、そんなに甘くないというか。例えば全国5箇所でツアーを開催すると決めたら、やっぱり移動費用などで赤字になる地方が出てくるんですね。そんなときに、このタイミングでここでライブをするのはなんの意味があるか? って、1つ1つの意味を考えなくちゃいけない。それは音楽を届けるという意味でも、会社として経営していくという視点でも。それが最近やっと、自分も含めてスタッフ全員に根付いてきた感じがしています」
またツアーなどで全国を巡るなかで、「関西の気持ちよさ」も感じたといいます。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「振り返ってみると、イベント仕事などは活動拠点の東京よりも関西が多いんですよ。ライブもそうですが、関西はフットワークが軽い方が多いので、スムーズにいろいろなものが誕生するんです。僕の肌感覚ですが、よくも悪くもはっきりモノを言ってくださることが多いので、一気にいろんなことが進む。ときに慎重になることは大切ですが、ビジネスって探り探りになりすぎても、うまくいかないことも多いんじゃないかなというのは関西からの学びですね」
「とはいえ僕は、経営者という立場ではあるけれどブランドを作るほうが性に合っているんです」と小宮山さんは続けます。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「ロゴやイラスト、押し出しかたなど、ブランドという枠組みのほうが作りやすい。僕個人だけで純粋な経営みたいなものはできないから、長らく続いているのは一緒にやってくれているスタッフのみんながいてくれるからこそですね」
「これも、いろんな人と手を取り合うことで生まれたいい例かもしれません」と小宮山さんが話すのは、2018年に渋谷でスタートしたレモンライス専門店『Lemon Rice TOKYO(レモンライストーキョー)』のこと。現在は実店舗をクローズしEC販売とイベント出店に特化していますが、はじまりは約一坪のお店でした。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「いまは『レモンライストーキョー』というブランドのいろんなモノを作るという形に変化しました。もともとは当時の共同オーナーに『カレーを作ってほしい』と声をかけてもらったのがきっかけなんですが、ただのカレー屋ではおもしろくないから、レモンライスはどうかなと」
「実店舗での営業も楽しかったですが、ECにスイッチしてからはフードロスが出ませんし、何より24時間お店を開けておける状態というのがいまの時代にも合っているなと感じています。引き続きブランドの可能性を探っていけたら」
これまでもレモンライスの販売だけではなく、催事への出店やナチュラルローソンとコラボした「レモンライスおにぎり」の販売、レシピ本の発売など、「レモンライストーキョー」という一つのブランドとして形にとらわれない戦略が注目されています。フレキシブルなその考えの根源は、「ミュージシャンの性かもしれませんね」と続けます。
小宮山雄飛さん(以下:小宮山さん)
「僕は常に何かしらのやりたいことがあるので、やりたいことがなくて悩むことはなかった人生ですが、その『やりたいこと』をどう形にするか、それをどう伝えるかという見極めに悩むことはあります」
「歌を作っている時点できっとそうですよね。そこには誰かに聴いてもらいたい、CDとしてお店に置かれたいという気持ちがあって。会社としていろんなモノ作りをしているのも、そうしたミュージシャンとしての自分が根っこにあるからだと思います」