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大西石油株式会社常務取締役 | 大西健五
2021.12.20
車を所有している人であれば、日常的に利用するガソリンスタンド。普通であれば給油や洗車など、目的を果たせば特に用事もありませんが、神戸市長田区には、親身な対応で思わず腰を据えたくなるお店があるとのこと。いったい、どのような魅力を秘めているのか。サンフラワー長田SSのオーナーである大西健五さんにお店の成り立ちやリピーターを増やし続けているサービスの内容を伺いました。
大西石油株式会社常務取締役 | 大西健五
おおにしけんご/1971年生まれ。神戸で戦後まもなくから続く石油事業者の家庭に生まれる。1996年より家業を継承し、大西石油株式会社の常務取締役兼サンフラワー長田SSのオーナーに就任。地域に根ざした経営を展開し、給油だけでなく修理など車・バイクの相談事を一手に引き受ける。神戸を中心に不動産事業も展開している。
神戸市長田区に店を構えるガソリンスタンド・サンフラワー長田SS。電車の最寄り駅まで距離があり、移動手段に車が欠かせない山間の住宅地で、この店舗は給油だけでなく、近隣住民たちの生活を支える大きな役割を担っています。
同店のオーナーである大西健五さんが地域に根ざすことを心がけ、ただのガソリンスタンドではない店舗を作ったきっかけとは? 社会に貢献したいという精神を通して、愛される店作りの秘密が垣間見えてきます。
大西健五さん(以下:大西さん)
取材中にもたくさんの常連客が出入りして大西さんに車の相談事を持ちかけるなど、お店の雰囲気は、さながら近所の寄り合い所のよう。なごやかな雰囲気は一般的に想像するガソリンスタンドとは少し趣が異なります。
大西健五さん(以下:大西さん)
「こちらが壁を作ったら、お客様も言いにくいし、頼ってもらえる環境づくりをしないといけませんから。わざわざ遠方から来てくださる方もいますし、近くで事故をされた方には、普段どこで整備されているかを聞いて、私が電話して修理の段取りをするなど、よそなら断ることもできる限りお受けしています。もちろん代車もお貸しして。そうやって知り合ったお客様が『次から会社の車、全部ここで給油するから』と言ってくださったりして信用が生まれます。困っている人を前にして線を引かないことが大事ですね」
車やバイクでトラブルを抱えた来店客に対し親身に対応することで成長を遂げたサンフラワー長田SS。サポートについても万全の体制を整えています。
大西健五さん(以下:大西さん)
「当店で最も利益を上げているのは、実は修理なんです。ディーラーもたくさんあるのに、なぜ、わざわざうちに言いに来てくださるかといえば、それは普段からのコミュニケーションづくり。うちは、バイクならここ、車ならここ、板金ならこことか、長年の関係で信頼できる工場を押さえており、お客様には良いものをお返しできるよう、今まで磨いた感性でプロフェッショナルな職人を厳選してきました。そういう方々とチームを組んで、本当に地域最安じゃないかといいぐらいの価格で良い仕事をさせてもらっています」
ときにはスタンド業務に関係ないことまで相談を受け、協力することも。
大西健五さん(以下:大西さん)
「お客様の車に使われている部品が生産を終了しているということで、私がネットオークションで見つけてくるなんてこともやっています。普通、ガソリンスタンドではバイク関連のことってあまりやらないんですけど、当店の場合、私がもともとバイク乗りで、どこから部品を引っ張れば良いか、どうやったら直せるかなど勝手も分かっているので、何かと頼りにしていただいていますね。どんな仕事も人に希望や力を与えるものであると思うので、困っている人がいたら積極的に助ける。当店のスタッフにも、それは徹底して伝えています」
サンフラワー長田SSは、戦後間もない昭和21年に大西油店の屋号で開業。日本が復興への道を歩む中で油の販売をいち早く行い、造船業などの重工業を支えていました。
大西健五さん(以下:大西さん)
「私の祖父が開業したのですが、戦後の大変な時に、夜中に手こぎボートで外国船に近づいて油を回してもらったり、本当に大変な時代で、家族を食べさせるため、どんな仕事も断らずにやっていたと聞いています。やがて僕の父が跡を継ぎ、私も子どもの頃から、従業員の皆さんが朝から晩まで油にまみれながら一生懸命作業されている様子などを間近で見ていました。そんな環境で育ったものですからバイクや車を好きになるのも、ごく自然な流れでしたね」
やがて成人した大西さんは、ガソリンスタンドを継ぐ前に意外な職業も経験。
大西健五さん(以下:大西さん)
「子どもの頃から細かいことをするのが好きだったので、近所の歯科医で歯科技工士の修行をしていました。得意分野を人の役に立てることにと思ったら医療関係にたどり着いて。それで自分の技工がどこまで通用するのか試したいと思い、海外への伝手を探していたら、ニュージーランドで修行ができるというお話があって。ビザを申請して許可もおり、さあ行くぞと思っていたら、父からガソリンスタンドを継がないかと相談されました」
突然、降って湧いた大役。自分の思い描いた夢に向かう矢先だったこともあり、大西さんはすぐに結論を出すことができませんでした。
大西健五さん(以下:大西さん)
「父には少し考えさせてくれと伝えて時間をもらいました。当時、スポーツインストラクターのアルバイトもしていて、名だたる企業の社長さんが私の会員さんとして来られていたので、レッスンの合間に事情を聞いていただいて。そしたらみなさん、『技工士の夢もあるだろうけど、いつかは継ぐ家業なら、フットワークもきく今の間にやった方がいい』と言ってくださって。それで後押ししていただいたのと、最終的には父が年齢的にしんどそうで、その上で私に聞いてくれたんだなということを感じて後を継ぐ決心ができました」
こうして大西さんは父親から家業を継承し、25歳にしてガソリンスタンドの経営者に。未開の領域での仕事は、大冒険の連続だったと語ります。
大西健五さん(以下:大西さん)
「私が長男で、下の弟2人と3人で1店舗ずつやることになったのですが、まあ大変で。本当にいろいろなタイプのお客様が来てくださるので、ちょっとのことでは動じなくなりました(笑)。25年間、この場所で店を続けていますが、その間に若者の車離れやハイブリッドカーの台頭によるガソリン需要の低下、大手企業による淘汰などあって、近くに8店舗ほどあったガソリンスタンドは、みんな閉店。私たちの場合は街の診療所兼よろず屋のような距離感でのサービスを徹底し、お客様が口コミで広めてくださることで今も続けられています」
大西さんのプロフェッショナルな仕事ぶりの根幹となっているのは、アクティブな趣味の数々。中でも車やバイクのレースは、ガソリンスタンドの仕事にも直結する重要なルーツの一つです。
大西健五さん(以下:大西さん)
「父親がオフロードのバイクに乗っていたので小さな頃からなじみはありました。中学生の時に友人のお兄さんが鈴鹿サーキットの8時間耐久レース(8耐)に出るから見に行ってきたらと言われて、友人と3人でテントとシュラフをかついで現地へ。8耐って4日かけて行わるんですけど、その間テントで寝泊まりしながらレースを観戦しました。最初にサーキット前のコーナーに立った瞬間、迫力と音と匂いで圧倒されちゃって。10分ぐらい3人で立ち尽くしていましたが、五感がビンビン研ぎ澄まされる感じもして、完全にバイクレースの虜になりました」
その後、大学に進学した大西さんは免許を取得し、ライダーへの道を歩み始めます。
大西健五さん(以下:大西さん)
「近くに西六甲という走り屋の聖地があって、そこでバイクの練習をしてサーキットに行くんですけど、やっぱり、もう次元が違う。速い人がたくさんいて、そんな中で練習すると段々レベルが上がって草レースに出たいとなって出るけど、やっぱり話にならない。どうすれば良いかといえば、やっぱり練習。体幹トレーニングやプロの人の練習法を真似して体を作っていきました」
大西健五さん(以下:大西さん)
「ただ、転倒や怪我もするし、店を始めてからは、ちょっとこれはまずいと思ってフォーミュラーカーの原点であるレーシングカートに転向。こっちも楽しかったけど、やっぱりバイクって人馬一体というか機械と人間の一体感がすごくて。300キロ近いスピードが出て、200キロ近いスピードでコーナーに入って地面がすぐそこに迫って、バイクの鼓動を感じながらコントロールするんです。正直、あのスリルは恋しくなってしまいますね(笑)。バイクの他にスキーやサーフィンなどもやっているのですが、どれも高いレベルで取り組むことで成長できるし、そういった趣味がお客様との共通の話題に繋がっていくこともよくあります」
ガソリンスタンドの経営者として地元住民のカーライフを支えている大西さんですが、実は不動産業者としての一面も持っています。
大西健五さん(以下:大西さん)
「こちらを始めたきっかけは、私が実家でずっと親と住んでいて、そろそろ一人暮らしをしようと物件を見たら家賃が高いし、毎月大家さんに払うのがもったいないなと思って。それでふと、『これって買えないのかな、住むのはもちろん、複数所有したら売ったり貸したりもできるよな』って思ったんです。それで父親に相談したら、ちゃんと仕事していたら銀行が金を貸してくれるぞと教えてもらって」
大西健五さん(以下:大西さん)
「毎月の住宅ローンを返し終えたら、その物件は完全に自分のものだし、支払い額を計算したら物件によるけど、家賃より確実に安い。それで、25歳の時に安い団地の一室を買いました。30歳で結婚して奥さんと一緒にそこに住んでいたのですが、安い物件をもう一個買って人に貸せないかと思って。頭金があれば銀行がお金を貸してくれるし、毎月の返済額より家賃が上ならどんどんプラスになる。そうやって貯まったお金で進行中のローンを一気に返す。それがおもしろくて不動産の投資運用を始めたんです」
不動産と聞くとハードルが高いように思われますが、低価格の物件から始めることでリスクも最小限に抑えられるとのこと。
大西健五さん(以下:大西さん)
「僕が自分の住む団地の次に買ったのが30万円の一軒家。ちょっと傾いていて、友人のリフォーム業者に、どれぐらいお金をかけたら、住めるようになるか見積もりを出してもらったら150万円という金額が出たんです。当時、手元に180万円ぐらい貯金はあったから、さっそく取り掛かってもらい、改修後すぐに5万円の家賃で貸し出しました。金額的にも2年半ぐらいでペイできるから、それで自分の所有物件になるなら本当にありがたいことですよね」
購入した物件を賃貸に出す場合の心がけも運用を行う上で大事なポイント。
大西健五さん(以下:大西さん)
「物件の維持や管理について危惧される方もいると思いますが、しっかりした不動産業者なら、だいたい毎月家賃の3〜5%程度を支払うことで住人とのやり取りはやってくれます。購入する上で、まず心がけておかないといけないのは、絶対に良い立地。そして、古くてもいいから快適に暮らせるようにしっかりリフォームしておくこと。あと、チラシに出ている物件は、そんなにおいしくないので、その前に情報を掴んでおく。そうやって効率の良い物件を見つけ、入居者が決まれば家賃の二ヶ月分ぐらいをお礼に渡す感じですね」
NISAやIDECOなど、国が国民に対して投資運用を呼びかけている現在、大西さんの行っているような不動産運用は、地域の経済を循環させる役割も担っています。
大西健五さん(以下:大西さん)
「今の時代、銀行にお金を預けてもほとんど増えることはないし、株やFXはリスクが大きい。そう考えると不動産運用は安心性が高い投資と言えます。住人が決まって流れに乗せることができれば、あとはお金が勝手に仕事をしてくれます。近年よく語られる空き家問題についても家を手放したい人のニーズにも応え、住む人を見つければ地域の安全にも貢献できる。仲介業者やリフォーム業者など、一緒に組める仲間がいるのなら、私は絶対にお勧めしたいです。それで仕事を回し合って、なおかつお客様にも喜んでもらえたら本当にみんなwin-winになれるかなと思います」
さまざまな事業を展開している大西さんは今、ガソリンスタンド、不動産に続く第3の夢の実現に向けて動き出しています。
大西健五さん(以下:大西さん)
「今、海外の人がどんどん日本に入ってきて、うちの店のスタッフにもいますが、今後、さらにその数は増えると思います。彼らの中には定住する人もいるので、日本でお客様に喜んでもらえる接客マナーを教育し、派遣するサービスができればと思っています。今は私たちの学生時代とは常識がどんどん変化していって、若い人たち、海外から来る人たちのモチベーションが物欲ではなくなっているんです。それよりも、良いところを見つけて褒め、伸ばしてあげることで充実感を感じて、ものすごい頑張りを見せてくれる。そうやって、お互いにエネルギーを共有しながら成長し合える環境を築いていけたらいいなと思っています」
大西さんの仕事や生き方におけるスタンスは、一度きりの人生を邁進すること。自らの理想を掲げながら、人や社会のために役立つ事業を今後も展開し続けていきます。
大西健五さん(以下:大西さん)
「人間って歳を重ねるだけでは老いない。理想がなくなると、途端に老けていくんです。そのためにも自分は、まだまだしたいことがあるんだ!という欲求は大事です。そして常に行動することも必要。仕事でもそうですけど、どれだけ行動したかで後から付いてくるものが違ってきます。私が仲良くしていただいている年配のバイク仲間の方々は、お仕事を頑張られて、今ではご自宅にすごく立派なガレージを建てるなど、本当に人生を楽しまれています。私にとっても憧れの存在で、自分もそうやって理想を追い求めながら歳を重ね、若い人たちにカッコいいと思われるおっちゃんを目指したいですね」
サンフラワー長田SS / 大西石油(株)
給油・洗車はもちろん、事故対応など車に関するあらゆるトラブルに対応。修理やレストアも腕利きの工場とのコネクションにより低価格・高品質で行っている。
サンフラワー長田SS / 大西石油(株)
住所/兵庫県神戸市長田区堀切町10-1
電話/078-612-3530
営業時間/月曜日〜土曜日 7:00〜20:00、日曜日、祝日 9:00〜19:00
定休日/無休