歩いて気づいた関西の魅力。地道な作業を重ねた『関西ウォーカー』の復活劇

関西ウォーカー編集長 | 本田麻己

2020年4月にエリア情報誌『関西ウォーカー』編集長に就任、幼少期から長らく過ごした東京を初めて離れて新天地での一歩を踏み出した本田麻己さん。同誌のブラッシュアップ&情報誌を盛り上げる使命を受け、リサーチで関西のスポットを練り歩くうちに、その独特な風土に魅了されるようになったといいます。

本田麻己

関西ウォーカー編集長 | 本田麻己

ほんだまき/2000年に角川書店(現在の株式会社KADOKAWA)に入社し、『週刊ザテレビジョン』編集部に10年半、籍を置く。その後、『東京ウォーカー』で副編集長を担当し、2020年4月より『関西ウォーカー』9代目編集長に就任。グルメからエンターテインメントまで幅広い情報収集を行い、充実した誌面づくりを展開している。

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毎日10kmのウォーキングで感じたリアルな関西

2000年に株式会社KADOKAWAに入社し、『ザテレビジョン』『東京ウォーカー』の編集者として実績を積み上げてきた本田さんは、2020年4月に『関西ウォーカー』の編集長に就任。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受けて、同誌は制作の中止を余儀なくされます。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

東京から関西に着任した途端に、「外出を促すような雑誌を刊行すべき時期でない」という会社判断で、結局、『関西ウォーカー』は7月まで休刊に。それなら、その間に関西のことをできる限り調べようと思い、自分なりのリサーチを始めたんです。ただ、当時は電車に乗るのも危ないかもと言われていたので、毎日10kmぐらい大阪じゅうを練り歩いていました。

関西での船出はハードなものでしたが、風土や文化を知る絶好の機会に

関東育ちの本田さんにとって関西人のイメージは、テレビで活躍する雄弁な司会者やコメンテーターそのもの。しかし、人々とのふれあいを重ねていくうちに、その思いにも変化が現れます。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

僕が昔からテレビで見てきた関西のタレントさんって、すごい論客や弁の立つ方ばかりだったので、自分も大阪でマシンガンみたいに責め立てられたらどうしよう…なんて思っていたんです。ところが、実際には無口な人やおとなしく素朴な感じの人もたくさんいらっしゃり、先入観が覆されました。ただ、それと同じぐらい気さくに話しかけてくれる人もいて、僕が初対面の方にメディアの仕事をしていると話したら、「メディアって何? 雑誌? テレビ?」と媒体名を言うまで質問が続くことが多いです(笑)。そういうことが分かってからは、すごくやりやすくなりましたね。

歩き回って気づいた関西の魅力

リサーチを通して食や人々の気質などに肌で触れ、関西への理解を深めていった本田さん。さまざまなスポットを巡るうちに、日本を代表する観光地である京都に惹かれていくように。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

ベタな話ですが、京都って高い建物が少ないじゃないですか。ちょっとした丘から美しい街を一望できる。今後、日本の中でこんな街を作ることは絶対にできないし、そこにすごく価値があると思います。海外の方が関西に来るのって、やっぱり京都や奈良のような1000年規模の歴史を持つ街があるから。世界最古みたいな木造建築がたくさん見られるのって、すごく魅力的なんですよ。

本田さん撮影の平等院鳳凰堂。歴史を感じさせる京都での異世界体験は関東では味わえないもの

そんな本田さんが今、京都で注目しているスポットは、おしゃれなおとな時間を過ごすことができるナイスビューなバー。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

清水の丘にある『ザ・ホテル青龍』に『K36 The Bar』というルーフトップバーが昨年オープンしたんです。ここは、目の前の清水寺はもちろん、360°街並みを見渡すことができて、今、おそらく京都の中で最も景観の良い場所ではないかと思います。どの時間帯の景色も素晴らしいのですが、特に夕暮れから夜は八坂の塔のシルエットが浮かび上がってきて、とてもロマンチックです。ご一緒した人はみなさん喜ばれていますね。

京都の絶景をパノラマで堪能できる『K36 The Bar & Rooftop』 画像提供「K36 The Bar & Rooftop」

関西グルメ、次に食べたいのはこれだ!

編集者として働き始めた当初からグルメとエンタメへのこだわりが深い本田さん。特にグルメについては、気になる店は徹底的に巡りたいという自他共に認めるコレクター気質。食の都である大阪への赴任で、その熱はさらに高まりを見せていると語ります。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

赴任前はステレオタイプの情報で、大阪には粉もんや串カツのお店が多いと思っていたのですが、実際に街を歩いてみると、おでんとうどんのお店が多いことに驚かされました。うどんは今、ネオ大阪讃岐うどんという新しいジャンルもできているので要注目ですね。スイーツでは今、通年で食べられるモンブランがブームになっているんですけど、目の前で仕上げ調理をしてくれる劇場型、しぼりたてモンブランのお店に行列ができています。全国的なブームではありますが、関西は特にお店の充実度が群を抜いています。

現在も時間を見つけては、さまざまなスポットを巡り歩いている本田さんですが、まだ足を踏み入れていない気になる場所は?

本田麻己さん(以下:本田編集長)

意外に思われるかも知れませんが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにプライベートでは行ったことがないんです。「1人で来ている人もいるから、編集長もぜひ」とユニバーサル・スタジオ・ジャパン担当の編集部員に言われるんですけど、テーマパークでおじさん1人は、どうにも勇気が出なくて(笑)。編集部員や友人にも家庭があるので土日に一緒に来てもらうのが難しいのですが、行きたい気持ちはすごくあるので、どうにか早く実現させたいですね。

誌面いっぱいに情報を凝縮することで読者の反応が好転

原点回帰がもたらした『関西ウォーカー』の復活劇

雑誌業界がダウントレンドとして斜陽を見せる中、『関西ウォーカー』は本田さんの方針のもと、スタッフがひたすら足で情報を集め、できる限りの情報を掲載するという創刊当初のようなアナログな編集作業に回帰します。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

姉妹誌の『東京ウォーカー』が一時、写真に凝ったり、おしゃれでシンプルな誌面にしたりという方向性にシフトしていたんです。でも、それは結局、ウォーカーという媒体には求められていないなと思い、『関西ウォーカー』では、欄外にまで情報を詰め込み、見開きA3サイズという誌面の密度を濃くするという原点に立ち返りました。

スタッフ総出で行うリサーチと取材により誌面が活性化。1冊の中で膨大な情報を得ることができる『関西ウォーカー』は、インターネット隆盛の時代の中で、異例とも言える健闘ぶりを示しています。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

やっぱり自分たちで調べた情報には説得力があるし、「ウォーカーはたくさん情報が載っていて、お目当ての情報以外にも出会えるのがいい」と言われていたので、そこは大切にしました。ありがたいことにコロナ状況下でも好評をいただいているのですが、関西の読者は隅から隅まで読んで、クーポンもたくさん使ってくださるから作りがいがあります。ドライブコースの走行時間を何度も計測したり、飲食店でのソーシャルディスタンスは本当に守られているのか?と実際にメジャーで測ったり、毎月、地道な検証作業をやっているのも報われます(笑)。

「関西での誌面づくりや読者からの受け入れられ方に関東との大きな違いを感じた」という本田さん

関西から全国に向けてオリジナルコンテンツを

編集長として関西ウォーカーを牽引している本田さん。次なるアクションとして、関西から全国に向けてのヒットコンテンツを生み出すことを目標としています。

本田麻己さん(以下:本田編集長)

『関西ウォーカー』もWEBの『ウォーカープラス関西』も関西の情報を扱っていますが、コロナ禍で家にいる人も多くなったので、地元の観光情報だけ扱っていればよいという状況ではなくなってきました。今の我々の目標は、『関西ウォーカー』編集部からベストセラー小説や漫画を出すこと。スタッフも精鋭が揃っていますし、現実的に可能な話だと思っています。創作活動を行っている人と積極的に繋がり、関西が全国を相手にできるコンテンツの発信地であることをアピールしていきたいです。

「関西からベストセラーを生み出したい」という本田さん。創作に勤しむ作家のみなさん、ぜひ、ご連絡を!

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K36 The Bar & Rooftop

K36 The Bar & Rooftop

ザ・ホテル青龍の最上階で贅沢な大人のひとときを過ごすことができるバー。店内は京都の街並みを見渡せるルーフトップバー&レストラン「K36 Rooftop」と室内のメインバー「K36 The Bar」の2エリアで構成されている。地元産食材で作るオードブルと京都のトップバーテンダーが作るカクテルをはじめ、各種ドリンクを嗜みながら夕暮れ〜ライトアップの絶景を楽しんで。

住所 〒605-0862 京都府京都市東山区清水2-204-2 4F The Hotel Seiryu

電話番号 075-541-3636

営業時間 15:00〜24:00

定休日 無休